極楽歌劇団公演
 
蝶子と吉治郎の家 
  〜貧乏神旅立ち篇〜


東京 北沢タウンホール
 2009年 3月 4日(水)
大阪 精華小劇場
     4月17日(金)〜19日(日)
    全7公演




「道頓堀極楽商店街」で毎日上演され
好評だったシリーズの劇場版に

洋あおいさんがゲスト出演しました。
 役は “思い込みの激しい歌劇の
男役スター 煌光(きらめき ひかる) ”。
金髪のロングヘアーに総スパンの輝く
衣装、オスカルを思わせる姿は、
まさに歌劇のスーパースター。

笑って、ほろりとさせて、パワーと
テンポのある展開、歌とダンスに
トレンドを絡めて、とても面白い
人情ミュージカルでした。

昭和初期、大阪・道頓堀。駆け落ち
して夫婦になったワケありの
蝶子(雪乃美玲さん)と
吉治郎(錦織大輔さん)の家には、
貧乏神(久保充さん)が住みつき、
すっかり和んでいる。しっかり者の
蝶子が苦労して貯めたへそくりを、
道楽に使い果たした吉治郎と派手な
夫婦げんかが始まる。 
そんな “蝶子と吉治郎の家”
に自殺志望の不細工な芸者 
“パンダ奴” (岡崎順次さん)や
歌劇スター “煌光” が訪れて
大騒ぎ。
そのうち貧乏神の早とちりから
死神や疫病神までやってきて、
吉治郎を被告に裁判が始まる。
 近所のイマドキの高校生 
“あほ・かほ” コンビや
地獄からやってきた蝶子の亡く
なった父親の証言によって
蝶子の生い立ちが明らかに、
やがて吉治郎に判決が下る・・・。

洋さんの “輝くスターぶり” 
には魅了されました!
注目を一身に集める、思わせ
ぶりな登場から、頭のてっぺん
から靴の先まで豪華に、
目力のある瞳まですべて
スターオーラに輝いていました。
♪愛〜それは わたし〜♪ 
 有名な歌の替え歌ですが、
 “愛” という意味深長な
言葉を “それは私”と
臆することなく歌ってしまう、
あまりの壷の思わず噴出して
しまいました。
「いざ パリへ!」 と満員
電車?に揺られ “痴漢騒ぎ”
 から “民衆の敵” 
そして “革命の嵐” ・・・
と連想ゲームのように、
めまぐるしく展開する場面に
一人大奮闘する思い込みの
激しいスターに、爆笑でした。
パロディやナンセンスな笑い
なのですが、あくまでも美しさ
を損なうことなく、笑いに
徹する熱演ぶりに、全てを
犠牲にして1つの夢を追う
 “あほのロマン” を
 感じました。

「蝶子と吉治郎の家」 には、
いつもユニークな客が訪れ
ドタバタ騒ぎを起こしますが、
珍妙な登場人物の根底に作者の
やさしい眼差しを感じます。
“ブス” と言われ散々な自殺
志望のパンダ奴さえ、探していた
姉 (煌光) に会って希望を
見つけた時、その笑顔はブスと
いうより “きも・かわいい!?”
 可愛くみえるから不思議です。
作者ブログ中の “ブスの25条”
 より、パンダ奴は既に 
 “ブス” を超えたのです。

蝶子と吉治郎の家に住み着いた
貧乏神は、本当に不幸な家には
住まず、不幸ではあっても、
ほんの少しの幸せに喜びを
見出すような人の家に住み、
それを糧にして生きている
そうです。
 貧乏神は遠慮がちで、
控えめで、時折厚かましい
のですが、妙に人間味を
感じます。
 裁判の結果 
“道頓堀ところ払い” 
になった蝶子と吉治郎が、
同時に行き場所を無くした
貧乏神を放っておけなかった
気持ち解かります。

散々と苦労させられる蝶子です
が、その道楽者の吉治郎の背に
 “お日いさん” が見えると
いいます。
まっすぐにそこにある自分の
幸せを信じ、不幸な過去を乗り
越えて新しい幸せを見出す
浪花女の強さを、それ以上に
吉治郎を思う覚悟さえ感じ
ました。

北林佐和子さんの舞台は必ず
最後にほのかな光を見せて
くれます。
代表作 「闇の貴公子」 
も先日の
OSK 「桜彦翔る!」 
もしかりです。
この作品では吉治郎に温情も
加わり
 「所払い」 と 
 “ほのかな光” も
感じるが、本拠地を無くした
極楽歌劇団に思いを馳せると
あまりに頼りない。
 しかし 「所払い」 
という処置は旅人扱いでは
滞在可能だそうで、再び
蝶子や吉治郎に 
“スーパースター煌光”
や貧乏神や道頓堀の住人と
出会うことを期待したい
ものです。










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