浪花人情紙風船団 第15回公演   

   天空からの応援歌    
                 
               :近鉄アート館
               :2015年4月9日〜12日
               : 7回公演



15周年を迎えた浪花人情紙風船団、洋さんは第3回
「センセとおしえご」から数えて10作品目のご出演でした
(ペーパーバルーン公演を含めると15作品目)。

今回はなんと神様役、
まっ赤な髪に華やかな羽衣衣装の七福神の中、
唯一の女神“弁財天”。
子どもの幸せを願う母と弁財天の思いがけない結末に
「あぁー、そうだったのか」と明かされた真実に
感動納得させられた公演でした。


幕開きは神々が集う天界。
♪天界は神のまほろば♪(詩・曲リピート山中さん)
と弁財天(洋あおいさん)、
吉祥天(沙月梨乃さん)
毘沙門天(未央一さん)と
声を合わせる歌がいかにも神々しくおごそか。
そんな天界で七福神主催の会合に「集まりが少ない!」
と気の強い弁財天は一人ご機嫌が悪い。

「下界の方がおもしろいべ」と言う
座敷童子の言葉に引き付けられ、
弁財天は座敷童子の案内で、
下界のマコト(白川明彦さん)の住む
ボロアパートへ降りて行く。
座敷童子が住み着いているマコトには
ラッキーなことが続き、
更に弁財天の福が舞い降り街に出かけては
グルメにお酒に大豪遊。
やがて降臨してきた毘沙門天、韋駄天を誘い、
大黒天(大橋壮多さん)の大切な”打ち出の小槌“を
内緒で拝借し福をばら撒きに街へ繰り出す。

同じアパートのタケル(田村ツトムさん)の
部屋には自縛霊の貞子が住みつき、
やがて貧乏神(曾我廼家八十吉さん)も、
その後を追うように厄病神(紅壱子さん)も住みつく。
霊や神様には実体は無く人間には見えないが
タケルには透けてはいるが見えるようだ。
タケルはツキから見放されている。
幼い時に母は家出、父は事故で亡くなり
祖母に育てられてきた。
仕事に就いては失業のくり返しで今回も失職したばかり、
親切な不動産屋が親心で面倒みてやろうとした途端、
不動産屋が急死してしまう始末。
失業したタケルを更なる不幸が襲う。
唯一励まし心に懸けていてくれた
田舎の祖母が亡くなり、親戚からも見放される。
打ちひしがれるタケルに押しかけ同居人の厄病神が
「不公平や!」と怒り、
しきりに応援するがそのわけが
次第に明らかになって行く。


弁財天の酔っぱらいぶり、とてもキュートでした!
下界での弁財天は長ハチマキに学ラン姿、
陽気に酔っぱらって
“生”の人間たちの面白さを歌い踊る場面は
マコトや毘沙門天を巻き込んで
ミュージカルのワンシーンのようでした。
言い出したら聞く耳を持たない
厄介な酔っぱらいですが、
なんとも憎めないキュートな酔っぱらいぶり、
天界での女王様が連想されます。

心に添うとは?悩む弁財天の気持ちが伝わってきます。
逃げ去った恋人を待ち続ける自縛霊貞子と
急死した不動産屋の霊は、
自分の死を受け入れることが出来ない。
降臨してきた神々にこの理不尽さをぶつけるが、
神々は逆に“善かれ”と抗う二人の浮遊霊を
昇天させてしまう。
現世に心を残し納得しないまま全ての記憶を消され、
心穏やかになることに厄病神は猛烈に抵抗する。
「人間の心が判っていない!」と
責められ一途に悩む弁財天。
達磨さま(南条好輝さん)がそんな弁財天に
「その人の心に寄り添うこと」と慈父のように
優しく教え諭す場面に感じ入りました。

母の愛は神様さえ欺く!?
祖母を失い打ちひしがれるタケルは、
貧乏神のとりなしで厄病神こそタケルの母親だと知る。
タケルに会いたい一心で浮遊霊が
厄病神になりすましていたわけである。
母の事情を聞くうちに、長い間心に引っかかっていた
母に捨てられたという思いが吹っ切れる。
母は何時も心に懸けていた。
しかしようやく会えたタケルとの別れが迫ってきた。

弁財天の母と子を慈しむ歌声が・・・
弁財天が母の愛を讃える歌を歌った時、別れを拒み、
思わずタケルがすがった母は、
実体のない空気のように捉えどころのない“霊”ではなく、
温かな母になっていた。
やがて安心感か母の膝を枕に胎児のように丸くなり、
深く深く眠るタケル・・・。
弁財天の歌声に包まれた母と子の巡り会いに
涙が止まらず・・・
これこそ弁財天の「心に寄り添う」計らいであった。

エール合戦に泣き笑いました。
神々がタケルにエールを送りました。
それは神々が勝手に“えこひいき”をする宣言
でもありました。
「決して贅沢をするのではなく、
ささやかな幸せを応援するものである!」という言葉に
作者の思いが伝わってきます。
弁財天から疫病神?いやタケルの母さちよさんに
エールが送られます。
「あの世でも頑張れ!」と。  
最後は間もなく旅立つタケルの母さちよさんからのエール。
全ての思いをはき出すかのような長いエールでした。
頑張って生きているひとり一人に向かって励まし、
最後に「人間 頑張れ!」と、
納得して別れを告げるさちよさんに涙しました。

アンコールでは大黒天が打ち出の小槌を振り、
観客に“福”をザクザクと撒いて下さいました。
観客の“福”とは浪花人情紙風船団が20周年を目指して
ご活躍されること、次回の舞台を楽しみにしております。


今回の公演では、振付も担当されました。