ドラマティック・レビュー  
 新・私は男役  re−START −清く 正しく たくましく−
                   作・演出 北林佐和子  
             
           道頓堀ZAZA 2012年6月7日〜10日 全6回
OSKOGと劇団Gock-Luckのコラボは文字通り まさにドラマティック!
芝居と歌劇のファンタジーが相まって3Dのように立ち上がり、目の離せない実に面白い舞台でした!
洋さんは様々な面を見せて、元男役スター“葵さくら”の人生を、“男役”の奥深さを、真実味をもって見せてくれました。
また、葵さくらの人生や、歌劇のミューズたちの台詞には、90周年を迎えるOSK歌劇団へのエールと愛が溢れていました。

道頓堀ZAZAの舞台は4月の「屋上の女達」の時はシューズボックス型で客席は長方形に伸びていましたが、 今回は舞台の3方を階段状の客席が囲み、左右も広く、客席と舞台がとても近く集中度もグッと上がりました。

歌劇団を卒業して10年、女優として評価を得てきた“葵さくら”は、このリサイタルで今まで封印してきた“男役”に再び取り組みたいと思った。
しかし、歌劇の男役を評価しない演出家(大澤真也さん)には言い出せず、少々元気がない。
そんな時、さくらの元に歌劇のミューズたち(有希晃さん・友麻亜里さん・若木志帆さん・花風ひかるさん)が再び舞戻って来た!
ミューズたちと、歌劇に憧れた頃のさくら(三原悠里さん)や、壁にぶつかった時のことを、その時々の母の励ましを思い出すうちに、さくらは次第に勇気を取り戻していく。
舞台で共演する新進女優(高畠ゆうみさん)の挑戦的な歌を受け入れ、情熱的に応じるさくらに演出家は「今までの男役の枠を超えたい」という彼女の言葉に耳を傾けていく。
さくらのいない楽屋を訪れるエハラ(レスカじゅんさん)、その後、さくらの妹かおる(平本真弓さん)が恋人と街を出ると別れを告げにきた。
ようやく“男役”を披露することになったさくらの元に恋人西島(薔薇の先生)の友人 ナツメ(小久保びんさん) が訪れ、西島の思い出とともに彼の訃報を伝える・・・

幕開き、寄る辺ない子どものような心細げなさくらの歌に、胸を衝かれました!
記念的なリサイタルを前にさくらに薔薇の記憶が・・・。  10年振りに披露する "男役”は、誰よりも 薔薇の先生、西島に観てほしいのでは、抑えてきた、会えない恋人への思いが溢れ出し、さくらの孤独の深淵を見る思いでした。
やがて、付き人(万田あけ美さん)の明るさに乗せられ、いつもの陽気なさくらが戻ってきました。

さくらを励ます母の言葉に笑い、そして涙しました。
♪「私は男役」の歌とともに繰り広げられる、歌劇スターに憧れた頃からの、さくらと歌劇のミューズたちの回想場面。 ポケットから取り出した丸い眼鏡をかけた洋さんは、一瞬で“さくら”から“さくらの母”に。 困難にぶつかり泣き言を言うさくらに、母の言葉は時に厳しく、時に子どもをなだめるように、いつも温かく、真剣で、娘を思う気持ちに溢れていました。

新進女優デコとの歌の競演は迫力がありました。
若い力で迫ってくる新進女優デコに、気持ち新たに『躊躇せず正面から向かってみよう』とさくらは、再度歌の挑戦をうけます。 デコの歌い出す ♪「スーパースター(カーペンターズ)」は、もう居ない恋人を求める歌、次に続くさくらの歌唱は、心に迫りデコはさくらの歌の力を認める。 歌う場面でガウンを取った洋さんは、背中が大きく開いたブルーのロングドレス。オフショルダーのデコルテに、一段とスリムなシルエットが際立ちきれいでした。

後半は、洋さんの本領発揮! 男役の奥深さに目を見張りました。
かおるは、父の違うさくらの妹、評判の悪い男と知りながら二人で街を出ると、さくらに別れを告げに来たが誰も居ない。 かおるのモノローグに、黒の衣装の洋さんと、まっ赤なドレスの花風ひかるさんが奔放な愛を体現するかのような情熱的な♪タンゴ。 かおるの思いが、心象風景のように舞台いっぱいに広がり、別れの言葉とともに消えていく・・・まるで幻想のようでした。また至近で観るタンゴの迫力と雰囲気に圧倒されました。

ナツメがさくらの男役の舞台を観るために楽屋を訪れ、西島から聞いたさくらの思い出を語り始める。 劇場の片隅でさくらの舞台を観ていた西島、プロポーズ、そして別れ・・・ナツメの言葉が過去の風景を立ち上げていく。 洋さんはソフト帽にトレンチコートの西島を、さくらが演じている男役を、さくらを、過去、現在を行き来しながらやがて西島の死に。 息詰まるような二人のやり取り、目まぐるしく変わる男役、徐々に高まってくる舞台の熱気に圧倒されました。

エンディングで歌われる、主題歌♪「薔薇の真実」は、なんとも切なく、情緒的な別れの歌、10年前の近鉄劇場でのサヨナラ公演を思い出します。 しかし、華やかに笑顔のさくらが歌うと、悲しみも寂しさも胸に秘め、健気に誇り高く生きるさくらが、洋さんとオーバーラップしてきます。ベージュの柔らかな衣装が優しく映えました。

ミューズたちは、小心者のさくらが人一倍努力して、トップスターになったことを見守っていたようです。 そしてトップもトップになれなかった人も、ひとり一人が健気に努力をして、個々の努力のつながりが、90周年を迎えたと、ミューズたちのリスペクトの言葉に納得しました。