太鼓歌劇 
      
  ブラインド   怪談 「耳なし芳一」より
             OSKx打打打団天鼓   作・演出 北林佐和子 
                  なんばHatch 2012年2月7日(火)〜9日(木)
 

圧倒的な和太鼓の響きと華麗な歌劇、それに舞台を構成する一つひとつの要素が融合して、
大迫力の心揺さぶる舞台に、同時に実に面白い “太鼓歌劇”でした。
「耳なし芳一」を題材に、平家物語の悲劇が描かれます。
壇ノ浦の戦いで滅亡した平家一門、心を残して海に散った人々の、
愛する者への時を越えた強い思い、さまよう魂に作者は心温まる結末を用意してくれました。

洋さんは現役生の中、唯一OSK OGとして、平家の総大将“トモモリ”役、
存在感のある佇まいはさすがです。   かたくなに心の奥底に閉じ込めた思いが、平家滅亡の真実と共にやがて温もりを取り戻していきます。


時は現代、盲目の人気作曲家 芳一 (高世麻央さん) は不思議な力で、 “港近く”に導かれ
意味ありげな女、 徳子 (朝香桜子さん) に出会う。
所望されて自ら作曲した “平家物語” を歌うと、次第に不思議な男女が集まり感極まって泣く声が、しかしどこからか 「お前の来る所ではない」 と言う声も・・・
街で出会った易者 (緋波亜紀さん) の「死相がでている」 という言葉にも耳を貸さず再び徳子との約束を守り、“港近く” を訪ねる。  
徳子の願いは死者を甦らす力を持つ芳一の歌によって、壇ノ浦で見失った子どもを捜すこと。   快く思わないミンブ (真麻里都さん) トモモリ (洋あおいさん)。
ついに芳一を狙う事件が起き、芳一は盲目ゆえの鋭い勘で事件の真相から平家滅亡の真実に迫っていく。


強烈な太鼓の一打から始まったプロローグ、ジェットコースターのように一気に 「ブラインド」 の世界に運ばれていきました。
異界の扉が開いたのか、明かりを手に黒い衣装の人々が何かを捜し求めている。
闇の気配に手向かう芳一、やがて明かりの中に照らし出される芳一。 
ミステリアスなダンスと太鼓の響き、鮮やかなオープニングでした。


無言で漂う “トモモリ” その存在感、威圧感は舞台を引き締めます。
芳一の “平家物語” の歌によって生き返る亡霊たち。  再会を喜ぶ謎の男女の間をひとりさまよう高貴な衣装の “トモモリ”、 かつての出来事を問う徳子に 「忘れた」 「忘れたほうが良いこともある」 と過去から目を閉ざす。  
陽気な太鼓や三味線に浮かれ騒ぐ人々、暗く背を向けるトモモリとミンブ、次への展開が急がれます。


源氏の末裔と言う易者によってトモモリが戦った一の谷の出来事が語られます。
勝ち戦に哄笑するトモモリとトモアキラ (悠浦あやとさん) に伏兵が襲いかかる。
刃を光らせる児玉党棟梁 (緋波亜紀さん) と兵士たち、槍で応戦するトモモリ、法螺貝が響き、大迫力の太鼓がなり、まさに人馬駆け回る殺気立った戦場の様相。
敵と組み合う息子を見ながら逃げ延びる父トモモリ、平家総大将の父を助け壮絶な戦死を遂げたトモアキラは初々しさが残る若者、「命を惜しむな 名こそ惜しめ」 トモモリの言葉はあまりにも切なく、敗走するトモモリの無念さが伝わってきます。


芳一は再び訪れた徳子の元で “風見鶏の矢” に襲われるが、鋭い勘で彼らが平家の亡霊であることを見抜き、そしてミンブとトモモリの心に迫る。
芳一に固執する徳子を制するものの、徳子の子を思う強さに接し、悲しげな表情のトモモリ、一連の場面は優雅な舞いで演じられ、その振り、その目の色、トモモリの心が痛いほど伝わってくる洋さんの面目躍如と言った場面でした。孤高のトモモリの心が次第に波立ってきます。
恩義のあるトモモリへの裏切りと義経に握られた妻真鶴の命の狭間に悩むミンブ。
トモモリの心に閉じ込めていた我が子への思いが溢れ、ミンブに語りかけるトモモリの言葉は意外でした。


「波の下にも都の候ぞ」 トモモリの言葉に唱和する一同、
盛者必衰の悟り、諸行無常の運命を受け入れ、すくっと立つトモモリに凄みさえ感じる場面でした。
そして今、長い長い時を経て芳一の歌によって再び会えた、徳子と安徳帝、ミンブと真鶴、そしてトモモリとトモアキラ。
万感込めたトモモリの 「ありがとう」 の言葉に涙しました。


フィナーレ
♪ 繁盛セー、 では大きな太鼓を皆で打ち、 
♪ ダンパラ では一同胸に抱えた太鼓連打。
太鼓の響き、その反復は心の深いところに作用していきます。
♪ 宇宙の雫  太鼓と笛にのって高世さんと朝香さんのデュエット、二組が加わり全員のダンスに。
♪ 寂光  わが子を守ってあげられなかった徳子の気持ちが伝わってきます。
♪ 洋さんは 「闇の貴公子」 からテーマ曲を歌われました。
ソウルフルな歌声、堂々たる “闇の貴公子” ぶりに
感激、  ♪ 闇こそ光 光こそ闇  
「ブラインド」 と同じ世界観を感じ聞き入りました。
♪ 物語のように  ブラインドのテーマ曲、なじみやすいフレーズは高世さんの声と共に耳に残りました。


日本ならではのミュージカル、しかし貫くテーマはすべてを超える普遍的なもの、和太鼓と歌劇のコラボ、「ブラインド」は歌劇ファンだけではなく、多くの方に観て頂きたい作品でした。
再上演されることを切望します。