浪花人情紙風船団 第10回公演

               屋上の女達
                                作:源じおな  演出:三浪郁二
       道頓堀ZAZA   2011年 4月 27日 (水)〜 30日 (金)  全7回公演
大盛況で終えた男役の龍馬(七つの顔をもつ龍馬)から一ヶ月半、今度はミナミの真ん中 “ZAZA”で女優としてストレートプレイに挑まれました。
洋さん演じる 「夏樹」はアパレル会社の元社長、紺のパンツスーツに白のブラウス、カラフルなスカーフとブランドのバッグ、少しショートにされたヘアスタイルが一段と活躍的でまさに有能なキャリアウーマン。
女優4人をメインに男優1人、そして3人の引越屋さん兼進行係?の笑いあり、涙ありの舞台は人と人との絆について考えさせるものでした。

ビルの屋上のフェンスを超え、下を覗き躊躇している愁子(紅萬子さん)を見てもなんの反応もせず無視する夏樹(洋あおいさん)に 「フツウなにか言うでしょ!」と思わず夏樹に詰め寄る愁子。 
やがて飛び降りを断念し帰りかけた愁子の目にフェンスを超えた夏樹が・・・急ぎ戻り「順番を守りなさい!」 
そのうちに和服姿の春江(和泉敬子さん)、ギャルファッションの冬美(恵宝ねいろさん)と次々と自殺志願の女たちが見えない糸で引き寄せられるように屋上に集まってきます。
「(飛び降りる)順番を守って!」という理屈に合わない愁子の言葉を聞くうちに、正気に戻り、とりあえず“皆で食事に行こう!”とレストランへ。

愁子は元中学校教師、いじめを注意して生徒に手を上げ怪我をさせたことが原因で失職。
夏樹は一生懸命働き、ようやく軌道に乗せた会社のお金を社員に持ち逃げされ、会社をつぶしてしまった。
春江は一人息子家族と同居するため二世帯住宅を建てたが、夫が急死、嫁と折り合いが悪く一人きりになった。
冬美は8ヶ月の妊婦、ところが6億円の当たりくじを持ってお腹の子の父親が突然消えてしまった。

抱えている事情をそれぞれ話すうち盛り上がり、今度はカラオケへと繰り出す。
歌や踊りに夢中になっている冬美が産気づき皆は救急車で病院へ。
やがて冬美と無事生まれた子供、そして生活の基盤を無くした女達が春江の二世帯住宅で共同生活を始め再出発を期しますが、夏樹に思いがけない事件が・・・

つい先ほどまで絶望の底にいた女達のレストランやカラオケでのはしゃぎよう、その変わり身の早さには笑ってしまいます。
彼女たちが必死に求めていたもの、それは一人屋上から飛び降りるのではなく、誰かと気持ちを共有したい、繋がっていたいということだと痛いほど伝わってきます。
冬美の「8ヶ月」と「6億円」の発言に思わず口からプチトマトとブロッコリーを飛ばす愁子と夏樹、マンガチックな場面の絶妙なタイミングに爆笑でした。

カラオケの場面、幕末で夏樹の歌う「for you」 大人の女性を感じさせる熱唱に感激!  同じカラオケルームにいるようで聞き入りましたが、最後のフレーズ 「♪ 彼方がほしい〜」ではなく
「♪ お金がほしい〜」としっかり “元社長夏樹”になっていました。

女達の共同生活が穏やかに過ぎる中、夏樹の最愛の弟が突然交通事故で亡くなる。
それも夏樹の目の前、夏樹をかばうかのように。
突然の不幸に立ち直れず荒んだ心のままの夏樹。 寂しげな姿に派手な上着が一層悲しく哀れに見えます。
些細なことで冬美にくってかかる夏樹に愁子のの怒りの平手が飛ぶ。 仕返す夏樹、二人のぶつかり合いは衝撃的でした。 掴み掛かる二人に劇場にも緊張感が・・・
「私をかばったため、あの子は・・・」と自分を責める苦しい胸のうちを吐露する夏樹に、愁子は屋上のフェンスを超えたもう一つの本当のわけを語り、春江は心の奥にしまった幼い娘を亡くしたときのことを一つひとつ思い出すように話します。
お互い本音をぶちまけ、本音をしっかり受けとめる、3人の女優のぶつかり合いは心に迫り涙が止まりません。

つらい事を乗り越えた後には幸運が・・・
冬美の失った当たりくじの一部「2億円」が振り込まれていた!  すっかり鶴子の母親らしくなった冬美の結論は「鶴子基金」として共同生活者に貸し出すこと。
新しい出発に彼女たちのモットー「働く女は美しい!」は誇らしく響きます。

外に向かって戦っている愁子と夏樹、頼りなく見えた主婦春江の生活者としての確かな存在感、幼くして母親を亡くした冬美に「おかあさん」と呼ばれる場面に思わず涙しました。 鶴子は皆の未来そのもの、屋上で出会った女達は共同生活者というより “家族” としてリアリティを持って迫ってきました。

それぞれの場面に登場する “男” (山本拓平さん) はウエイター、カラオケで働く中国人、医師、弟、葬儀屋・・・ と扮装を変えてすべての役をこなす面白い存在でした。  最後のMCで舞台を閉じるとて象徴的な詩を読まれました。
       退屈な女より もっと哀れなのは・・・・略・・・
       死んだ女より もっと哀れなのは  忘れられた女です(マリーローランサン)
作者 源じおなさん(紅萬子さん)の思いが伝わってくるようでした。