浪花人情紙風船団 ペーパーバルーン公演 SHOOT4 
            
           銀色の靴の踵を鳴らして・・・

       ワッハホール    2010年6月 3日(木) 4日(金) 5日(土) 6日(日) 全7回  
新しい作者に“白乃十万氏”を迎えて4作目のペーパーバルーン公演は、とてもハートウォーミングな舞台でした。
洋さんは出生の秘密を持ち、荒んだ生活から修道女ハナ(紅 萬子さん)に助けられ、この教会で暮らす “はるか”。  個性的な教会の住人たちと 「西遊記」と「オズの魔法使い」のミュージカルが上演され、洋さんは三蔵法師とドロシーの役を演じわけられました。

緑の森に佇む古ぼけた教会、通称 “迷いの森の教会” では朝の礼拝が行われている。
一見何の問題もなく見える彼ら、実は世間からつまはじきにされ、居場所をなくし、心に傷を負った人たち。  ようやく辿り着いた “迷いの森の教会” では人の良い ランボオ神父(多賀勝一さん)、気さくな修道女 ハナのもと、楽しく共同生活をしている。 その中にミュージカル劇団のトップだった はるか(洋 あおいさん)もいる。

はるかは感謝祭で上演する恒例の「オズの魔法使い」の指揮を任されているが、もう一つ気乗りしない様子。  いつも明るくエキセントリックな キャッシー(未央 一さん)は熱心に「西遊記」の上演を主張する。  ハナの承諾もあり、なぜか時空を迷って教会に辿りついた 水戸光圀公 (楠 年明さん) 助さん(新島 愛一郎さん) 格さん(青野 敏行さん)も巻き込んで2つのミュージカルの練習が始まった。

「西遊記」のリハーサルの後、ハナの身に重大な事が起きる。  思わぬ事態に激しく動揺する“迷いの森”の住人たち。 やがて「三蔵法師」を演じたはるかにもひとつの転機が・・・

ハナと“迷いの森の教会”の住人との別れの場面には泣かされました。
皆の退院歓迎に応える車椅子のハナは、すっかり弱って小さくなってしまっている。  念願の教会に帰り、優しさに満ちた笑顔でひとり一人に励ましの言葉をかけるハナ・・・しかしハナは・・・。
紅さんの迫真の演技に、見送る住人たちの悲しみに、ゴスペル調の ♪友(ハナ)を送る歌♪が重なり、しばし涙が止まりませんでした。

水戸黄門主従の登場は唐突だが、黄門様こそTVドラマのように、迷子になった心と心を結ぶ究極のカウンセラー。  長い間心の奥に秘めていたハナの真実を解きほぐし、はるかの思いにそっと重ねた・・・。
突然迷いの森の教会に現れ、慌ただしく帰る黄門様はTVドラマ以上にご老公らしく、まさに本物でした。

ジャージやシーンズ姿のボーイッシュで勝気な“はるか”は新鮮でした!
朝の体操の颯爽としたリーダーぶりに等身大の洋さんを感じました。 しかし感謝祭のイベントに「西遊記」を押すキャッシーのはしゃぎように比べなぜか素っ気ないはるか。  心がさ迷っているような寂しさが見え隠れする“はるか”に目が離せませんでした。

「西遊記」で ♪はるかな旅立ち♪ を歌う三蔵法師役の洋さん。 白の衣装に金色の袈裟に被り物、凛々しく、美しく、はるか遠くを見つめる視線に困難に立ち向かう強い意志が伝わってきます。
カラフルな衣装の悟空たちと、行く手を阻む敵との立ち回りが痛快でした。 三蔵法師も錫杖を鳴らして牛魔王の息子赤劾児(安希つかささん)との立ち回りはさすが決まっていました。

ハナが亡くなって間もなくの感謝祭、ハナが大好きだった「オズの魔法使い」が上演されます。
ブルーのドレスに白いサッシュ、長い金髪を耳元で二つに結び、 ♪あなたがいつも♪ を歌う洋さん。
紛れもなく、“ドロシー” でした!
歌い方、目線、振り、レースの手袋の指の先まで少女らしく、素直で、好ましく、その可愛らしさには驚きました。 オズ 3人組(案山子、ライオン、ブリキのきこり)と住人たち、パンプキンカラーの衣装のダンサーが踊る「オズの魔法使い」の華やかな大団円でした。

健気な“はるか”に、胸が熱くなるエンディングでした。
感謝祭も終わり、誰もいない礼拝堂に修道服にベール姿のはるかが現れる。 長いスカートを両手でつまみ、銀の靴の踵を軽やかに 3回打つ。 その時天井には虹が、そしてハナの姿が・・・
ようやく“我家”に辿り着いたはるか。  母に伝える“はるか”の決心に「はるかちゃん」と呼びかけるハナの声が聞こえてくるようでした。

今回も色々な劇団からのキャスト陣、様々な事情を抱えた“迷いの森の教会”の個性的な住人にぴったりでした。  リピート山中さんの散りばめられた多彩な曲、大谷盛雄さんのダンスも魅力的で、DVDが待たれます!