「蝶子と吉治郎の家」スピンオフシリーズ  煌  光  愛と感動のオンステージ 
             2010年 1月 9日(土) 10日(日) 11日(月祝) 

                             全6回公演  studio ZAZA

「蝶子と吉治郎の家」のスピンオフシリーズ
昨年春 精華小劇場を沸かせたトップスター “煌 光”が再び戻ってきました!
今回の舞台は軍靴の音が次第に大きくなり始めた頃の“道頓堀少女歌劇団”   元祖、初代、ニ代目と三人の“煌 光”と極楽歌劇団が文字通り“愛と感動のステージ”を見せてくれました。

元祖 煌光(洋あおい)の退団公演の華やかなレビューは客席から乱入した特高 向坂(大澤真也さん)の怒声によって中断されます。
アイカランバを踊る娘役(池田千絵さん、恵宝ねいろさん、晴日あかねさん、雪乃美玲さん)の衣装の露出を理由に公演中止を迫るが、元祖 煌光のはからいでとりあえず事態は収拾する。

しかし女性ばかりの歌劇団は不謹慎であると向坂が劇団の責任者になり、久保浅次郎 (小久保びんさん)と榎本じゅん (レスカじゅんさん)二人の男子が投入されることになった。
重い病を自覚している元祖 煌 光は、半年後の公演と向坂の入団を条件に要求を呑む。

真の目的は治安維持法違反で逮捕状の出ている劇団演出家立花を捕らえるため、恋人の娘役トップの大和川シズ子(平本真弓さん)を見張ること。

男子生徒とともに洋舞、歌、日舞のレッスンが始まり、その中で初代(友麻亜里さん)の向坂への反発や二代目(希望なつ紀さん)と元浅草芸人榎本じゅんの交流もうまれるが、男子生徒が向坂のスパイであることも判明してくる。

元祖を見守る妾腹の姉ハル(万田あけ美さん)や、病を心配して入団した幼馴染、錦林太郎(錦織大輔さん)が元祖の退団公演を計画、その中で密かに大和川シズ子を立花の元に逃がす大芝居を画策する。  舞台が始まり、この企てに気づいた向坂は・・・・・

時代に翻弄されながらも、人を愛し、歌劇を愛し、清冽に生きた“元祖煌光”は紛れもなくあの時代に実在した!  と思わせる洋さんの真に迫る演技に圧倒されました。

真っ赤な総スパンの衣装で  ♪ババルー を歌う“華やかなレビューの男役”。

日舞稽古場では、少女歌劇団トップとして存在感のある
“粋な着物姿の女性”を。  劇中劇の出征兵士はまさに歌劇の男役。
笑いを含めてそれぞれ演じ分ける多彩な表現はさすがです。

日舞稽古場の場面、散る桜、燃え上がる散り際の紅葉に自らの命を重ねて歌い踊る日舞に目も心も奪われました。
凛とした所作のひとつひとつがどこを切っても美しく、劇団トップの使命感、忍びよる病魔、困難に立ち向かう決意がひしひしと伝わってきます。

♪時代は移り行く 逆巻く嵐のように
 愛する人も夢も すべて奪って吹きすさむ
 争いは果てしなく たとえ明日は見えずとも
 せめて歌わん 我が恋は 色あせず この命つきるとも♪  
と歌われるリピート山中さんが作られたテーマ曲 「時代の花」 が切なく、終幕後も頭の中でずっと鳴っていました。


又、軍服姿で踊られる“出陣の舞”は圧巻でした。
出征兵士の心に自分の思いを重ねて 「生きられる命なら生き抜いてほしい」と大和川の幸せや赤紙のきた向坂の行く末を祈るように、“元祖 煌 光”最後の輝きを放つ決死の覚悟さえ見える凄い気迫の舞いに、ただただ圧倒されました。


気丈な煌光が、義理の姉“ハル”に見せた純情に胸突かれました。
“ハル”だけにきつく当たる煌光、終幕近く、その心の内を吐露する彼女の思いがけない一面に、素顔の煌光のあまりにも、ピュアな女心に思わず涙しました。

元祖煌光が下級生に語る言葉は、作者の観客へのメッセージであり、テーマでもあり、終幕の向坂の行動を暗示するものでした。
「自分を信じて、愛する人を信じて・・・」  「人の心は、人に接してこそ変化するもの・・・」
元祖は全ての難題を受け入れ、そして信じたのでしょう。 向坂のことさえも・・・
物語を閉じる浅次郎の述懐に心を打たれました。
「あれは夢だったのだろうか・・・」 彼にとって仲間たちと一つの目標に向かって励んだ日々、それは彼の人生の中で最も輝かしい時、痛いほど伝わってくる別れの言葉とともに忘れがたいエンディングでした。

トラウマを抱えた初代、二代目、入団した可笑しな男子生徒達、劇団の娘役たちが歌やレビューを挟んでみせる舞台はスピード感も快く、極楽歌劇団風のおかしくもなにやら切ない。
悲劇的な結末ながら、観劇後の気持ちは心洗われるようで、素晴らしい舞台を観たという充実感でいっぱいでした。
どこかで再びこの舞台に出会えたらと、しきりに願っている日々です。

元祖煌光が台詞から日舞を舞い歌う場面、是非是非、闇の貴公子“鬼の道行”同様、洋さんの名場面に加えて、何時かご披露いただきたいものです。