浪花人情紙風船団 第7回公演 
負けても イギョラ!!
2007年6月28日(木)〜7月1日(日)全7公演 ワッハホール

5回目の出演になる洋さんの役は、国民的ヒーロー “力王山” に請われてメインエベントの前に国歌を歌う大阪歌劇団のトップスター “滝乃江 麗”。
等身大の役ながら、芝居の進行とともに彼女の複雑な思いが明らかになっていきます。

舞台は昭和32年、プロ・レスリングの一大決戦 『英雄・力王山 VS 鉄人ルテー・テレンス』 戦がおこなわれる大阪扇町プール特設会場の控え室。
会場は、力王山の空手チョップを見ようと、満員御礼の30,000人の熱気ですでに危険な状態ですらある。

試合間近の控え室はウォーミングアップ中の遠藤(青野 敏行)らレスラーたち、同室にされ発生練習も出来ず不満を訴える滝乃江麗(洋 あおい)と付き人の西園寺(沙月 梨乃)、会長の菅本(楠 年明)、新米の記者や関係者。 そして力王山の為に焼肉の焼きだし(炊き出し)に来た一段と賑やかな在日の金田のおばやん(紅 萬子)一行と、これから始まる試合に盛り上がります。 そこに “力王山来ず!!” の知らせが届き、 さあ一大事! と最悪の事態を予想した遠藤たちの体を張った涙ぐましくも可笑しな奮闘が始まります。 すべて裏目に出るのですが、当時の人気レスラーを思わせる、超個性的なようすが笑わせます。 やがて、力王山の所在も判り関係者の話し合いで真剣勝負をかけて、無事メインエベントの試合が行われます。

プロレスの試合進行のうちに “金田のおばやん”と “滝乃江麗” の人生が、さまざまの人との関わりの中、透けて見えてきます。
洋さんの演じる滝乃江麗の高慢で自己中心的な “いやな女” ぶりはガチガチに肩肘はって生きてきた人生を思わせます。
朝鮮の言葉で歌い、応援し、焼肉を焼き一段と盛り上がったおばやん一行に 「わけの判らない言葉をつかわないで!ここは日本よ」 と、客席も舞台も一瞬息をのむような鋭い言葉でキレた滝乃江麗に、おばやんは穏やかに 「すいません。出すぎました。目立たんようにします」 とひたすら小さくなり、丸くなって何度も何度も謝る・・・ 押さえた心情に彼女の今までの人生を思い、胸衝かれる場面でした。
芝居の最後に滝乃江麗がおばやんに、 「うそをつかなければ芸能界で生きていけなかった」 と在日であることを明かします。 滝乃江麗にとって本名を名のり、朝鮮の言葉を話し自分自身でいることは、歌劇に入った頃から心の片隅に閉じ込め、排除し、見ないようにしてきた事で、同時に求めていたことでもあったのでしょう。 楽しげな世界を目の前にして、どうしようもなく混乱し、キレた彼女が、切なくいじらしく思われました。 
恋人でもある力王山が在日であることを知り、複雑な思いを胸に決戦の前に歌う 「君が代」 は印象深い場面でした。  歌劇の正装である紋付はかまを凛と着こなし、真剣な表情に彼女の決心を感じました。

目標を見失って朝鮮に帰りたいと泣く新人レスラー金太郎に、金田のおばやんは “ここで勝たなければ、生きていかれないんだよ” そして “負けても、最後は勝て!” という厳しい励ましの言葉をかけます。 
“だんどり” ばかりで “プロレスはウソだ!” と嘆く新米記者におばやんは言います。 “ウソがあって、ホンマがある。ウソを超えたらホントになる!” と。  彼は、おばやんのためにウソをつき、そして最後に 「日本国民の英雄 力王山を取材してきます!」 と自分にもウソをつく。 力王山の戦いが戦後の日本国民を励まし、勇気づけたのはホントであった。

芝居はウソであり、虚構の積み重ねである。 しかし、ウソである芝居のせりふの一言、一瞬の場面にきらりと光るホントを見つける。 それに触れた時感動し、登場人物に同調し涙する。 民族を超えて、人の喜び、悲しみに触れ、そして一生懸命になればなるほど滑稽な男たちに、泣き、笑いホントを見つけた舞台でした。