浪花人情紙風船団  ペーパーバルーン公演 SHOOT.1
かくも長き実在
3月9日(金)〜11日(日)全6公演 ワッハホール

第1回目のペーパーバルーン公演「かくも長き実在」は、いつもの浪花人情紙風船団の公演とは、また一味違う舞台でした。“もっとコミカル、たっぷりセンチメンタル”のキャチフレーズ通り、軽いタッチでテンポよく、荒唐無稽な展開と巧みな演者に、毒と笑いをまぶして・・・しかし貫くテーマはしっかり“リアル”でした。

洋さんは、さまよい人を天国に誘導する天使。ある時はカッコよく、又、ある時はお堅い保険外交員、MCもあり“ほのピー”を思い出させます。
劇中、黒燕尾で〜すばらしい人生〜♪と、 ♪ス・ワンダフル♪を高らかに歌い上げ、さすが輝いていました。又、センチメンタルに ♪朧月夜♪を。エンディングにノリノリで ♪ラ・ボエーム♪と、一段とはじけた色々な顔を見せてくれました。

交通事故で亡くなったはずの母栗子(紅萬子)が、四十九日の朝、何事も無かったように今里家に帰ってきた! 興味津々の展開に思わず舞台に集中です。
驚く家族を翻弄する紅さんの”困ったちゃんぶり“は自己中心的で果てしなく、とんでもないのですが、ひたすら痛快です。翻弄される父敏夫(青野敏行)やこどもたち。さからうと怖いのです。なにしろ1度死んでいるのですから。
しかし、保険外交員の高井(洋あおい)や怪しい天使たちの登場で次第に栗子の“戻ってきたわけ”が解明されていきます。紅さん、洋さんの二人の対決がまさに見ものでした。

二人の対決の場面の台詞が心に残ります。「みんな私の誕生日を忘れている!」「私が唯一主役になれる日じゃない」と栗子は憤慨します。「その位のことで・・・」と高井はあきれるのですが、栗子は真剣です。誕生日とは“自分の誕生(存在)が祝福され、必要とされ、肯定されること。ほとんどの人は育ちの中(幼児の頃)で充分に承認していくことですが、栗子は不幸な過去もあり、愛され必要とされている確信がほしかったのでしょう。栗子はまた、「大草原のちいさな家」のように、“家族と話をしたい”と言います。人はコミュニケーションの中で自分自身を確認していくものです。
家族の正直な思いを聞いた時、栗子は自分の心を取り戻し、穏やかに妹柿江(沙月梨乃)の幸福も祝福できたのでしょう。祖父貞夫(楠敏明)から思いがけず差し出された写経を読む別れの場面は感動的でした。

9年前の再演ということですが“さまよい人”が、社会問題になる昨今、作者(菱田信也)の時代を捉えるアンテナの高さに感心しました。
重いテーマを笑いと毒と巧みな出演者で軽く表現した作品は、受け入れ易く又、説得力があります。“SHOOT、2”期待しております。
後日 公演のDVDが出るとの事。はじけた舞台との再会が楽しみです。