Fly Me to The Moon 〜三日月ヶ原に連れてって〜

2005年5月19日(木)〜22日(日) 全7公演
ワッハホール
 今回で3度目になる洋さんの浪花人情紙風船団の女優出演は、以前にも増して芝居の世界にすっかり溶け込み、かつ清烈な印象と存在感を感じさせる公演でした。
舞台は大阪のとある小さな町、三日月ヶ原。ここに住む如月家の38年の歴史が如月家の母豊子の葬儀の席で回想されます。

 時は大阪万博。大阪府警機動隊に配属された若き日の父、如月星蔵(青野敏行)は、乳飲み子星太郎を抱えた豊子(紅萬子)に「ウルトラマンになって大阪と地球の平和を守る!」と宣言して仕事場に飛び出していきます。家を守る豊子は機動隊の仲間はもちろん、無心にしか戻らない勝手な豊子の父豊蔵(楠年明)や近所のヤクザから左翼学生、世間からはみ出した若者を「お腹いっぱい食べてね」「若者は未来」と快く分け隔てなくもてなし、めんどうをみている懐の大きい肝っ玉かあさん。

 それから10数年後、金髪に真っ赤な上衣、裾広がりのパンタロンの派手な極道の妹という女、久子(洋あおい)が如月家を尋ねてきます。「返して!」と土足のまま座敷にあがり、注意されて靴を脱ぎとばし、臨月の豊子に“ドス”を取り出して迫ります。逃げる豊子。追いかける久子、久子に逆恨みだとなだめるヤクザの司。騒動の末“ドス”を豊子に押さえられ、久子は殺人を犯した恋人が警官に殺されたと、どこにも持って行きようがない哀しみを吐露します。豊子はそのままの久子を受け入れ、三日月ヶ原に住むことを促し、居場所を得た久子は豊子の良き理解者にも、みんなの野球チーム「そやねんず」のマネジャーにもなり、穏やかに暮らし始めます。

 阪神優勝に沸く大阪。中学受験に失敗した長男星太郎は暴走族の仲間に入り、父星蔵を恨み「勝負したる!」と居間でナイフを取り出し暴れます。久子は思わず包丁を手に「男が勝負することは死ぬ気でかかってきぃ!」と星太郎に挑み、彼を押さえ込み彼の心の奥に迫って行きます。低い声でせまり首に包丁をあてタンカを切る久子は迫力です。泣く星太郎に「辛かったんやねぇ?泣いたらえぇ」と気の弱い町内会長の言葉が印象的です。

 やがて阪神大震災。豊子の乳がんが発覚、大阪の治安のため地球の平和のため闘ってきた星蔵もあまりに大きい災害に「命を救うこともでけへん、もうウルトラマンなんかとちがう!」と焦燥感に打ちひしがれます。「そんな泣き言を言う家を造ったんとちがう!」といつもの元気もなく泣く豊子。「生きて帰ってくるだけでいいんとちがうの・・・」「泣き言を言える家でいいんとちがうの・・・」と久子が涙をこらえ励ますように“♪胸につけてるマークは流星・・・“だんだん力強く劇場に響くウルトラマンのテーマソングが心を打ちます。星蔵は再び元気を取り戻します。

 10年がたち豊子の葬儀の日。定年になった星蔵と他の星の住人になった豊子、そして長い間父とわだかまりのあった星太郎、父の意思を継ぐ長女フジコらが心を1つにして大阪の地球の平安のため旅立ちます。久子は彼らにエールを送るように“♪胸に光る マークは流星・・・”と明るくウルトラマンのテーマソングを歌い出し、やがて全員の声になります。あたかも会場の皆へのエールのようでした。

 ウルトラマンに案内され辿った如月家の歴史は私たちそれぞれの歴史でもあり考えさせるものでした。
洋さんは30歳から20数年を髪型や衣装を変えて演じ、どれもよくお似合いでした。又、金髪の久子が騒動の末、臨月の豊子にドスを押さえられ二人でウルトラマンの敵、ゼットンとバルタン星人のように威嚇しあう緊迫した場面から笑いに至るシーンを見て今度はお二人の火花を散らすような芝居が観たいと思いました。