まちあいしつであいましょう

2004年5月13日〜16日 ワッハホール
 昨年に続き女優として「浪花人情紙風船団」の公演に出演されました。舞台は大阪環状線のとある駅近くの総合病院の待合室。この「まちあいしつ」の昼と夜が人々の心の「明と暗」、「表と裏」のように描かれます。洋さんの役は「肩に届く茶髪、黄色系のフェミニンなドレスにミュール」の須田弥生。彼女の存在は芝居の進行によって徐々に明らかになっていくと言うミステリアスな展開です。期待どうりの、いやそれ以上のものを観客一人一人の心に残された公演でした。

ハーモニカ、ギター等の「ガジェット」の演奏の中「まちあいしつ」に患者が集まりはじめます。まちあいしつで患者を診るニセ医者、青田(青野敏行)、エエ加減な看護師、千重子(紅萬子)、堅物の若先生(田村勤)、明るく楽しい、まちあいしつをと願う院長(楠年明)、たちが登場して一段と“賑やかかしましさわがしい”。その喧騒の中、しきりにケータイをかけている派手な女が登場。騒ぎと全く関わらず患者の間をさまよっている影のような存在に思わず芝居の中に引き込まれていきます。そして夜、薄暗く不気味なまちあいしつ、ずっとケータイをかけている弥生に「誰にかけてんの、彼氏?」千重子は語りかけるが弥生は繋がらない電話にイライラと突っぱねるばかり・・・。まちあいしつの昼と夜が対照的に描かれ弥生の存在がより鮮やかに浮かび上がってきます。そしてついに、ハチャメチャ騒ぎのまちあいしつに弥生の待っていた人が現れ次第に明らかになっていく弥生の存在。飲酒運転で事故を起こし集中治療室に収容され全く意識がないと、さまよう弥生は千重子にしか見えなかったのです。しかし待ち続けた恋人の思いがけない言葉に傷つき、うろたえ、消沈する弥生に千重子は必死に言います。「何か事情があるのや!わかってやり!」その夜、ハーモニカの切ない響きの中、身じろぎもせず、ぽつんと一人すわっている弥生に哀れさが募ります。静まり返った夜のまちあいしつで 青田の事情が語られます。泥酔して悔やんでも悔やみきれない過去を「笑ってなー、しゃーない」と悲しく笑いとばす場面はさすがです。又、「あの子は私たちの見えないものが見えるのです。話せない人の心が解かるのです」と千重子のエエ加減さの事情を院長は暖かく見守っています。そして弥生の恋人の始末のつかない事情が明らかに、しかし彼は心の内を悔恨と共に弥生を思いやり、集中治療室の彼女を見舞います。作者は昼間の“騒ぎ”の一人一人の事情を、抱えた荷物を、思いを、やさしく暖かく包んでくれます。持病の心臓発作で倒れた千重子は、夜のまちあいしつで弥生に再会し二人に奇妙な友情が生まれます。「生と死のはざまにいる二人」の漫才のような会話もやがて別れが、一人は生に向かって一人はあの世に「生きていても、死んでいても元気でいよなー。」と悲しみをこらえるかのようなトンチンカンな別れの言葉に切なさがつのります。そして「どこかのまちあいしつであいましょ!」と。再び夜のまちあいしつに一人になった弥生のもとに始めてケータイが繋がります。肩からかけた小さなバックからケータイを取り出し「須田弥生です。・・略・・上ですか、下ですか?・・略・・お世話になります!。」あの世からの旅立ちの催促に弥生は全ての「事情」に納得して思いを込めて清々しいまでに答えます。切なさも頂点、知らず間に涙が・・・とまらず・・・。洋さんのこの芝居を集約するセリフに暖かいしみじみとした拍手が自然とわき、大きくなり まさに「洋っさん!!」と言う場面でした。

そしてエピローグ。穏やかなどこかの“まちあいしつ”。白い帽子の女と白いパンツスーツに粋なカウボーイハットの女が、つまり千重子と弥生が友情を確かめるように再会を喜びあい?、お互いの近況報告、公演ごとに「事情」が変わり千穐楽にはかなり複雑な人間関係に、二人の快調なアドリブにホッと暖かな気持ちになりました。